2017年12月31日日曜日

番外編:ベストバイギア・ミーティング 〜寒中パックラフト大会〜 2017.12

番外編:ベストバイギア・ミーティング 〜寒中パックラフト大会〜 2017.12

強豪ひしめくアウトドア情報サイト界に彗星のように現れた「爆笑系」アウトドアギア・レビューサイト、BEST BUY GEAR。
個人的に大注目していたのだが、その第一回目の水上系イベントとして岐阜県の武儀川支流で「第1回 神崎川うどんミーティング!〜寒中パックラフト大会〜」が催されたので、その模様と知られざる舞台裏をご紹介したい。

詳細はBEST BUY GEARに公開された本編を見ていただくことにして、同時進行のスタイルで別のカメラがとらえた(BBG未公開も含めた)映像を見ていただきたい。

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プロローグ

事の始まりは、春から見始めたBBGのサイト上で語られるパックラフトのすばらしさを知り、さらにユーコンカワイ氏がBBGを始める前にUPされたブログ記事を見てパックラフトが本気で欲しくなってしまったのだ。
そしてBBGの掲示板でユーコンカワイ氏に背中を押され、数日後には名古屋・栄のモンベルでココペリ・ホーネットライトを注文し、10月中には7艇目のフネとして入手。
しかし、その後は秋に台風が2度直撃するなどして全く川に行けず、今シーズンは乗らずに終わるのか?と思っていた矢先にこのイベントが発表され、すぐに参加表明したのだった。

当日の朝

長良川の支流なんでしょ、、、と軽く見ていたが、武儀川のかなり奥にある支流で予想外に遠いことが判明したのは目的地をナビに打ち込んでからだった。やべえ、遅れたらきっと土下座だ~!。途中で到着時間がギリギリになりそうなことをユーコンカワイ氏に電話で伝え目的地まで急ぐが、そういう時に限って路線バスやら軽トラなどが行く手をふさぐ。初めての電話コンタクトがこんな内容とは本当に情けない、涙。


すべての地図・写真はクリックすると大きく表示されます。

集合時間の1分前に滑り込みセーフで到着し土下座は回避、笑

挨拶もそこそこに急いで着替え、オガワ社長の高級SUVで上流のスタート地点まで送っていただく。スタート地点にくる途中で見た橋の気温計は2℃の表示だったから、上流のこの辺りはほぼ0℃ぐらいか?


使い慣れた手押しポンプではなく付属のスタッフサックでエアーを入れるが効率が悪い~ (写真提供BBG)

これはパックラフトの起源が、「荒野を旅する中で湖や大河を渡ったりするためのもの」ということで、付属品も人力で担いでいけるよう、軽く・かさばらないという事が重要だったからだろう。確かに全くかさばらず重量も無視できるレベルだ。ただ、この日は途中から電動ポンプを借りてエアーを注入。

 この寒空の中、師走の川に赴く5人の秘密戦隊

並ぶと戦隊モノのようで、何やら強そうに見えるから不思議だ、笑。

ううむ、どうみても川の水が少ないぞ

スタートは土手の急斜面を降りたところの対岸で、いきなり渡渉する必要があったが、濡れたくなかったので私だけフェリーグライドで漕ぎ渡った。5人中3人がドライスーツ着用だったが私はウェットスーツなので今日は絶対に濡れるわけにはいかないのだ!。

 太陽が出てきたが、日陰ばかりの渓谷を下っていく

顔がヒリつくぐらい空気は冷たいが、透明度の高い空気と水に心が躍る。

 なんて水が綺麗なのか!!

カーブを曲がって川に日が差し込むと、写真で見た「フネが空を飛んでいるような」本当に透明な世界が待っていた。

 ユーコンカワイ氏も興奮気味で写真撮影に余念がない。

冬の川も良いものだとしみじみ

 あまりのきれいさに、自然と笑い声が飛び出す感動的な川の透明度

日なたに出ればそれほど寒くない、今日は素晴らしい川下りになりそうだ

 透明なプールを意味もなく漕ぎまわる

朝日を浴びたパックラフトが透けて見えユーコンカワイ氏が神々しく見える

繰り返しザラ瀬を流されてゆく

川の中がスケスケだ

ひとしきり楽しんだところで小休止、カヤッカー恒例のフネを取り換えての大試乗会

まずはマーボーTさんの赤い彗星・アルパカをお借りする。これはなかなかいい感じ、パックラフト特有の平らなフネがクルクル回るというイメージではなく、ちゃんと直進性もあり、リーンをかけてもググッと踏ん張る。スターン部分の浮力が大きく前後に体重移動してもスターンが過剰に沈み込むことが無い。激瀬ではスターンを波に食われて沈することもあるのでここはよく考えられたデザインであり、アルパカらしさをアピールするポイントでもある。

スターン後端部が水に沈み込んでキールが効いているというか、普通のカヤックに近い操作性で、カヤックやダッキーの経験がある人間ならもっとも違和感なく、楽しく乗れるフネだろう。サイブレイスもありフネとの一体感も高く、腕さえあればロールやスポットプレイも楽しめそうだ。ただ、スプレースカートが使えるようにコーミングもついており、お値段は聞かなかったがホーネットライトが2艇は買えてしまいそうな金額だろう。川原に置いていても高級艇のオーラがあふれている。

 (写真提供BBG)
お次はユーコンカワイ氏の緑のNRSに乗り込んでみる。ゴムボートみたいとか、前が浮き上がるとか、ザクみたいな色だとユーコン氏からは酷評されているが、その実力とやらを見てみよう。確かにフネに乗った瞬間に荷重が後部に集中して前が浮き上がってしまうが、水に沈んでいる部分が後部だけなので、実際のフネの長さが1mもないのと同じ状態になる。そのため1回の軽いスイープで180度以上フネの向きを変えることができ、面白がってクルクルとスイープしていたら目が回りそうになった。それぐらい旋回性能が高いのだ。

前方フロアは広く、シュッとしていないが、そのぶん大きなザックを置いても足元が狭くならないだろう。このフネ本来の使用目的としては、広い前方フロアに60Lぐらいの重いザックをドンと置いて前後のトリムを合わせ、大きめの浮力(太めのチューブ)で大きな流れを悠々と下ってゆくという事だろうか。そしてフネ全体の幅が広いので横方向の安定性が高く、相対的に重心の移動に鈍感で転覆を起こしにくい。自分がパックラフトでカナダの川を数日掛けて下るのならこのNRS一択だろう。このフネは車で言えばグランドツーリング用なのだ。それでいて、今回のような空荷状態では、その極端な旋回性能を生かし、この狭い神崎川の岩がらみの瀬を素早くすり抜けることができる。また、太いチューブのおかげで足をチューブに乗っけて腰を浮かせるとフネ全体の喫水が均一になり、極端に浅いザラ瀬でも難なくすり抜けることができる。

乗り手がこのフネの奥深い特性(設計者の意図)を理解して操作できれば、その一見もっさりとした見た目(失礼!)とは裏腹に、2つの両極端な状況に高レベルで対応できる欲張りな性能を秘めた万能艇なのである。そして耐久性の方も、ユーコンカワイ氏が幾多のバトルでガンガン尻を打っても全く破損しなかったことでも証明されている通り、全く問題が無いうえ、実売価格もパックラフトの中でも安い部類だ。日帰りクリーキングからロングツーリングまでこなすおすすめのフネであり、機会があれば、数日お借りしてじっくり漕いでみたいものだ。

 写真をクリックすれば拡大表示が可能(写真提供BBG)
3艇目はアンドライOさんの、ココペリのニルヴァーナ。この黄色いフネは私のホーネットライトと同じメーカーで、同じ船型のため漕いだ感じもほぼ近く、NRSほどの回転性は無く、アルパカほどキールが効いている感じもない。また、基本的には幅広の平底なので平面的な動きだけでリーンを掛けても特に反応はしない。ただ、足先に向かってシュッと細くなった船型は両足の幅にフィットし、フネの中にザックを置いておけば足を踏ん張るのにちょうど良い長さでフネとのフィット感がけっこう高い。適度な旋回性と安定性は、アルパカとNRSのちょうど中間ぐらいの特性で、過激なところが無く気を使わず安心して乗れる。

ホーネットライトとの最大の違いはこの船に装備されたセルフベイラー(自動排水装置)にある。といっても特別なメカがあるわけではない。船底にわざと穴があけてあり自由に水が出入りできるようになっているが、フロアにエアチューブがあり通常はその下までしか水が来ないので乗員が濡れることは無いという仕組み。大きな瀬でドバっと水が入ってきたらフネは浮力で浮き上がろうとするので、船内に入った水はフロアチューブの横から船底に抜けて穴から排水されるのだ。普通の激流用ダッキー(エアー・リンクス、トムキャット等)と同じ仕組みで、フネに水が入ることを恐れず瀬に突っ込んで行くことができる。ツーリングも激流もという人にはお勧めの一艇だ。

 (写真提供BBG)
最後は、自分とコールドフットYさんが乗るココペリ・ホーネットライト。操作性などについてはニルヴァーナとほぼ同じで追記することは少ないが、このフネの一番の特徴は余分なものを全てそぎ落としたミニマムな設計思想だろう。セルフベイラーもフロアチューブもなく船底はペラペラの船体布一枚だけ。お尻の下にエアピローのようなクッションを置くが防御はたったそれだけだ。空気を入れるのも1気室構造で、他の艇についている口で空気を吹き込むためのバルブもついていない。このため、空気を入れたフネを水に浮かべたときに内部の空気が冷えて、フネがフニャフニャになったときに空気の補充がやりにくい(大きなバルブに直接息を吹き込めば可能だが)。

ポンプ用のバルブに直接息を吹き込むコールドフットYさん

ではこのフネのセールスポイントは?というと、2.2kgという圧倒的な軽さとパックラフトの中では最も安い部類の価格という事になるだろう。どこに行くにも楽に運べる軽さとコンパクトな収納性は、ユーコンカワイ氏の標榜するパックトランピング(パックラフトを伴った登山活動、私にはついていけない世界だが)や、電車・バス・飛行機を使ったカヌー旅に最も向いた特性なのではないか?、この軽さとコンパクトさはファルトボートや普通のダッキーとは全く異次元の機動性をもたらしてくれる事だろう。

不便さと防御が少ない分は、乗り手の腕と知恵でカバーするという「大人の道具」として割り切ればこれほど頼もしい旅の相棒はいないだろう。全国出張のついでにあちこちの川を楽しもうという欲張りなビジネスパーソンには最高の武器になるだろうし、山頂の自然湖にフネを浮かべたいという登山者にも、無駄を全てそぎ落としたホーネットライトは最高の相棒になってくれるだろう(怒られたりパックラフト禁止にならないよう注意してくださいね)。

安くて軽いからといって、必ずしも初心者向けではないかもしれないが、操作性のバランスが良くシンプルなのでどれにするか迷ったり、とりあえずの入門→乗り倒して最強の旅の相棒にするには良いフネかも。

 再スタートの後には、本日最初の難所が待ち構える

ちょっと枚数が多いが、自分が漕いでいる写真はなかなか無いのでお付き合いを。

 パックラフト一艇分の隙間に突入し(写真提供BBG)

  手とパドルを使って岩壁を押す、こんな狭い川じゃカーボンパドルなんてヤバくて使えない!(写真提供BBG)

  オットやべえ、腰で合わせて転覆を回避(写真提供BBG)

 次の瀬に向け右ターン準備 (写真提供BBG)
ターン後は体勢を整え次の段差へ  (写真提供BBG)

 あらよっ!と超えて無事にクリアー(写真提供BBG)

マーボーTさん(赤いアルパカ)は無念の沈脱を喫し、水抜き中。
アンドライOさん(黄色いニルヴァーナ)も同じ場所で撃沈したがセルフベイラー付きのため水抜き不要の手間いらず。

 ここにも透明なプールが!(写真提供BBG)

しかしここまで「無くなったユーコン氏のパドル」を探すのをすっかり忘れていた。

 次の難所は上陸してスカウティング

ミギミギセンターの瀬にアンドライOさんが突入

マーボーTさんに続き、見事なパドルさばきでOさんもクリアー

コースをしっかりイメージして私も突入!  (写真提供BBG)

漕いでいると、通れるルートが狭い  (写真提供BBG)

 素早く向きを変え (写真提供BBG)

ミギ  (写真提供BBG)

 そしてミギ (写真提供BBG)

 最後はセンターへ (写真提供BBG) 
無事にクリアー  (写真提供BBG)

 ユーコン氏も日本中のクリークを制した熟練のパドルさばきで危なげなくクリアー

 どや!、この日はユーコン氏のみノー沈でクリア、BBGの面目躍如

小さな滝の流れ込み

この川は全くごみが落ちていなし、ビニール袋が木の枝に引っかかっていることもない。やはり箒はユーコン氏の仕込みだったのではないか?というマーボーTさんの説は信憑性が高いかも。

 極端に浅い箇所では、足をエアチューブに載せて荷重を前後に分散し喫水を1cmでも浅くする。漫然と乗っているとケツをもろにヒットして絶叫する羽目になるからだ。
防御の薄いこのフネでは攻撃は最大の防御、積極的に岩を回避しケツを持ち上げる事が大切なのだ、笑。

3つ目の難所でコールドフットYさんがスライディング沈

 私も同じ場所で沈した後に再び乗り沈して、ユーコン氏に借りたNRSを流してしまった。必死で追うがなかなか追い付かず、川の中を走っているうちに岩でヒザを強打し追跡を断念。ユーコン氏はここでも自分のフネを追うというパックチェイス状態になってしまった。

水抜きのため、いったん上陸

ユーコンカワイ氏が現在位置をスマホで確認中、昼食場所はすぐ先だ

フネをチェンジして試乗中

 ちょうどいい感じの岩があり、リクエストでユーコンカワイ氏が飛び込み

マーボーTさんも負けずに飛び込み

 ふたたび美しい流れを下ってゆく

私が先頭でうっかり難所に突入寸前、カワイ氏から警告を受けて岩に上りポーテージ、ちょっと危ないところだった

 下流側から見るとこんな感じ、段差とひねりのある幅が一艇分の流れ

 上陸してアンドライOさんが流木に火をつけようとしたところ、ガスバーナーが暴走状態になりちょっとしたパニックに。(画面が白いのはカメラのレンズが結露していたせい)

 コールドフットYさん差し入れの、ノンアルコールビールで乾杯。美味しかったです!

 オガワ社長が拾い集めてくれた流木を燃やして暖を取る

撮影中に負傷してしまったオガワ社長(写真提供BBG)

アツシオガワ社長は実際にお会いすると、「こころ優しい好青年風」のお方で、事前に思っていたイメージと大きくかけ離れていてびっくり。これはユーコンカワイ氏によるweb上でのマインドコントロールにより、悪い先入観を持たされていた影響が大きいのだろう、笑。

春からはパックラフトに本格参戦されるという噂もあるが、水上ではユーコンカワイ氏との力関係が逆転するのか?、それとも地上戦と同じく地獄の水上追い込みを炸裂させるのか?

神崎川の新名物「ホワイト脳髄エイリアンうどん」、この時点では麺硬め

ううむ、温泉卵を先に入れたら煮立った時に普通のゆで卵になってしまうのでは?
最終的には美味しく煮立って、あっという間に参加者全員の胃袋に奉納された。餃子のニンニクパワーで後半戦を乗り切ろう。

 ユーコンカワイ氏が水上ブランコから勢いよく飛び込んだが、水深は30cm以下で「ギャフン」という効果音が聞こえてきそうな状況だった。ヒザが痛そう!

 ゴール手前の魚道のポーテージもパックラフトなら楽勝

これまでは堰堤があるために敬遠していた上流部の清流にも、新たな降河ルートを開拓することができる。パックラフトは、「普通の川では満足できなくなった」諸兄にとっては最高の遊び道具になるだろう。

 ゴールの橋の下で男同士の友情・マッスルドッキング!

ウェットスーツを脱いで風に吹かれると骨に染み入るほど寒い、ヒー!!

 あらためてフネを写真撮影
モンベル扱いのココペリ・ホーネットライト(2.2kg)、足元には銀マットをカットしたものを敷いてフロアを保護するように改造。

左横の黒い筒は製図の用紙やポスターを入れるためのプラスチックの筒(ダイソー:300円)を改造したもの。

同じくダイソーで買ったストラップを使って底面に筒を固定する

直進性を高め、静水で楽に漕げるようにするための改造アイテム。今日は浅い川なので出番がなかったが、次回出かけたときに効果を確認してご報告したい。

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<参考情報>

ベストバイギア・インスタグラム 神崎川(動画)
インスタグラムにUPされた、この日の川を下る動画、アプリが無くても試聴可能

過去のユーコンカワイ氏のパックラフト記事
(パックラフトの魅力を伝える珠玉の記録の数々)
これにやられてパックラフトを買ってしまいました、笑

さあ、川旅の世界へ!〜パックラフトの始め方① 魅力編〜

さあ、川旅の世界へ!〜パックラフトの始め方② 準備編〜

さあ、川旅の世界へ!〜パックラフトの始め方③ 実践編〜

まわれ柿太郎!〜小川パックラフト紀行・前編〜

泊まれ柿太郎!〜小川パックラフト紀行・後編〜

徳島西南部パックラフト紀行〜海部川-日和佐-鮎喰川〜

新種目「パックボディイング」開眼!〜神崎川放浪記〜

嗚呼デラべっぴん〜アテラブルーとデラブルー〜(阿寺渓谷/長野)

四国清流行脚1・上八川川編〜浮かれた漂流者〜

四国清流行脚2・仁淀川編〜孤独なソルジャー〜

四国清流行脚3・安居川編〜桃源郷の冒険者〜

四国清流行脚4・土居川編〜孤独な月見草〜

パックトランピングザック迷走記〜闇商人への稟議書〜

極マゾ後悔日誌4〜さらば孤高のトランパー〜(烏帽子岳〜野口五郎岳/長野)

栄光への架け橋3〜8耐ダッシュとゴッホの奇跡〜(大杉谷/三重)

マゾピース2 薬師沢編~夢をあきらめないで~(雲ノ平〜高天原/富山)

白雪姫殺人事件〜限界パックチェイスの悲劇〜(姫川/長野)



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